仕上がりに影響を与えるの?外壁塗装の色見本の役割と問題点とは
最終更新 : 2023.10.07
外壁塗装の仕上がりを想定するために、色見本を活用するケースがあります。言葉だけではどんな色なのか伝わりにくいからです。
ここで役立つのが色見本ですが、色見本は単なる色を集めたものではありません。いろいろな役割をもち、メリットだけではなくデメリットもあります。
大事なことは、色見本をどのように使えばいいかを知ることです。
問題点や利用方法をきちんと理解できるように、色見本の活用方法をご紹介します。
外壁塗装の色見本がもつ役割
外壁塗装で色見本とはどのような役割があるでしょうか?
色を決めるのは簡単ではないですよね。でも、自分の言葉で希望の色を施工会社に伝えても、本当に理解してもらえているか不安があるはずです。
大事なポイントはイメージを作る過程にあります。色見本から自分のイメージに近い色を選び、施工会社に伝えることができます。
しかし、イメージを伝えられるメリットがある代わりに、デメリットも出てきます。本当にその色であっているのか、もしかしたらどこか違う色を選んでいるかもという可能性もあります。塗ってみたら、色見本とは違って見えたということもあるのです。この辺りの判断が難しいポイントになります。
色見本はイメージを伝える面で大変便利ですが、それだけではうまくいきません。あくまでもイメージの共有の一手段としてとらえることが大切です。
色見本にもいろいろな種類がある
色見本にはいくつかパターンがあり、それぞれに特徴があります。特徴を覚えておくと、イメージを正確に伝えやすくなる可能性が高まるでしょう。
また、色見本を補完したり、違った使い方ができたりするものもあります。併せて利用することが大切です。
色見本帳
色見本帳は大きく分けてふたつあります。メーカーが作成したものと、日本塗装工業会作成のものです。
厚紙などに塗料を塗ったものであることは変わりませんが、そもそもの考え方が異なります。主とする部分の違いがあらわれてきますので、理解して利用しなければいけません。
メーカー作成
最も多くの人が目にするのは、塗料メーカーが作成している色見本になるでしょう。自社製品を使って作成されたもので、カタログの一部的な使い方もします。
ここでポイントになるのが、塗料メーカーという存在です。塗料メーカーは自社製品を使って色見本帳を作成します。当たり前ですが、自社製品を販売したいからです。自社製品の紹介のためにも作られているという目的を覚えておかなければいけません。
メーカー作成の色見本の場合、すでにどのような塗料を使用するのか決まっている場合に適しています。外壁塗装の機能によっては、使える色が限定される可能性があるのも理解しておきましょう。
塗料の色を調合する方法もあります。色見本にないから調合してもらうことになりますが、イメージのまとまり方としても全く違うプロセスになるでしょう。または近似色での対応になるケースが多くなります。
要注意なのは、カタログやパンフレットに掲載されているケースです。つまり、印刷されたものであるという点に問題があります。厚紙に塗装したものをいったん印刷用に取り込み、印刷インクで作っているため、紙もインクも種類が違います。こうなると色は全く違うものになる可能性を考慮しなければいけません。 メーカー側でもわかっていることで、色見本と同じように厚紙に塗装したものを張り付けている場合もあります。どちらなのかしっかり確認することが必要です。
日本塗装工業会作成
一般社団法人 日本塗装工業会が作成した色見本もあります。一般社団法人 日本塗装工業会とは、社団法人として70年の歴史がある日本最大の塗装団体です。
メーカーとは違って業界団体なので、載せられている色は基本的なものとして使われることが多いです。
その理由が色番号にあります。色見本帳には色番号が振られています。この番号を見れば、だれでも共通認識としてどの色かわかるようになっています。
日本塗装工業会の場合、色番号は日本のどこでも共通です。つまり、番号を指定することで、どんな施工会社でもメーカーでも同じ色を使えます。ただし塗料の性質上、わずかに違いが出ることは理解しておいてください。
実際に塗料メーカーが出していない色もあります。色としてとことんこだわるのなら、日本塗装工業会の色見本がいいでしょう。日本塗装工業会のHPから個人で購入することもできます。
しかし、塗装会社が使っているメーカーで対応できるかが問題です。中には色褪せしやすく、使いたくない色もあるかもしれません。そもそも外壁塗装に向いていない色が含まれている可能性もあるのです。それを色見本から判断するのは難しいでしょう。
メーカーが対応できない色の場合、近似色を選ぶなどになります。対応できないというケースよりも、その色を使うデメリットがあるケースのほうがほとんどのようです。
塗り板
色見本と近いものに塗り板と呼ばれるものがあります。塗り板とは、使う色を絞り込んでから専用の板に塗料を塗ったもののことです。仕上がりに近いものができあがるのがメリットで、イメージを固めやすくなります。
実際に塗装することで、下地の影響も判断しやすく、発色の部分もわかりやすいのがポイントです。大きなサイズで作ってくれることもあり、影響の少ない方法といえるでしょう。
この塗り板をもって外に出て、外壁の横に置くだけでイメージが固まりやすくなります。
塗り板は塗装会社が作成するものとメーカーが作るものがありますが、基本的にはどちらも同じ色です。ですが、実際の施工精度もわかるので、できるなら施工会社に作ってもらうほうがいいでしょう。
しかし、塗り板では全体像はわかりません。狭い範囲では予想がつきますし、施工精度の感じもつかめますが、全体となると変わってしまうからです。
カラーシミュレーション
カラーシミュレーションとは、CGを使って家全体に塗ってみる方法です。パソコンに画像を取り込んで描くので、全体像を把握するのに最も適しています。色見本ではわからないバランスもはっきりするのでおすすめです。
これまでのカラーシミュレーションは、いろいろな問題を抱えていました。
たとえば色の精度です。外壁塗装の塗料と印刷のインクの違いと同様に、同じ色が表現できませんでした。色の変更に関しても、そこまで機能をもっていたわけではなかったのです。画像の取り込みも粗く、うまく表現できないこともたくさんありました。
シンニッケンのカラーシミュレーションは、非常に高い精度で実現できます。モニターによる発色の違いなどはありますが、非常に高いレベルのシミュレーションができるようになったのです。
色見本ではわからない全体像の把握が可能になったことで、発注者と施工業者でのイメージの共有が可能になりました。色見本などと併せて使用することで、これまで以上にハイレベルな仕上がりを求められるのです。
外壁塗装の色見本を見るうえで大切な効果
外壁塗装をするうえで、色見本はとても大事な存在です。これは間違いありません。カラーシミュレーションなども利用することが大切ですが、色の効果を知らないと感じ方に差があることを理解できないかもしれないのです。
色は正確だけど、自分の目に違って映ることもあります。その理由を覚えておきましょう。
大きさで変わる面積効果
色を判断するうえで大事なのが面積効果です。面積によって色が変わることの事実を理解しておくと、色見本を含めた見方が変わります。
面積効果が起こる理由
面積効果とは、人間の網膜によっておこる色の違いを生み出す現象のことです。人間の目の構造上、どうしても避けられません。
面積効果の基本として、面積が小さいと暗く感じるという現象が挙げられます。後ほど解説しますが、色の三属性にも影響するポイントで、明度が低くなることが理由です。逆に面積が大きくなると明るく感じます。それも面積効果のひとつです。
ここでわかることは、色見本は面積が小さく、どうしても暗く感じます。暗い色はさらに暗くなるということを理解しなければいけません。外壁塗装はもっと大きな面積になるため、思っている以上に変化を感じるからです。
では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。同じ色なのにおかしいですよね。
光を含め目のなかに色が映し出されることで、人間は色を感じることができます。次に視細胞と呼ばれる部分が感知し、電気信号に変えて脳に伝えます。ここでのポイントは視細胞です。目のなかでは配置がきれいに整っているわけではなく、映像を脳に伝えられない場所が存在します。この構造が面積効果を生み出すのです。
距離や明るさの要素も面積効果と同様に、人間の色の感じ方に影響を与えます。
このような錯覚が起こるのが人間の目の構造です。色見本など小さなものなら、最初から少し明るくするだけで補正できるんじゃないかと思いますよね。 しかし、人間の目の構造はすべてはっきりしているわけではありません。電気信号として脳に伝わることはわかっていても、すべて解明されていないのです。面積効果は個人差もあるので、色見本を加工するのではなく、面積効果を理解した上でカラーシミュレーションなどで補完するということになります。
色の三属性の影響
色にはさまざまな要素がありますが、基本となるのが三属性です。これを覚えておくと、色見本を選ぶときの目線が変わります。ほんの少しイメージが違うんだけど…そんなときに三属性を理解していれば、イメージを伝えやすく、色を選びやすくなります。
色相
まずは基本の色相です。色相とは色合いをイメージとして伝える言葉と思うといいでしょう。色を説明するとき「白」「茶」「青」などいいますよね。実は色には決まりがあります。色相環と呼ばれるわっかで示すことが多いのですが、配置の決まりがあるのです。
色見本を選ぶうえではそこまで必要がありませんが、ツートンカラーや屋根の色との対比を考えるなら、色相を見た関係はとても重要になります。
明度
明度とは色の明るさのことです。明るい色、暗い色というのが明度の違いです。
単純な表現でいえば、明度が高く明るくなると白っぽくなり、明度を下げて暗くすると黒に近くなります。赤で表現すると、明度が上がるとピンクっぽく感じ、下げると暗い赤になるわけです。外壁塗装でも大事な要素になるでしょう。
彩度
彩度は色の鮮やかさと思えば間違いありません。鮮やかな色とか鈍い色という言い方をしますよね。これは彩度の違いのことです。
別記事で外壁塗装のお話をしたことがありますが、グレーを無彩色と呼んだりします。無彩色とは彩度が低い状態のことで、明度が高くなると白に近いグレー、明度が下がると黒に近いグレーになるわけです。
▼【外壁塗装色の選び方】あなたの好みはなに色?ポイントを解説
ファッションや車などでは、明度が上がると鮮やかな色ということで、vividと表現することがあるでしょう。ビビットなカラーと使ったりもします。発色のいい色のことで、とても鮮やかな色という意味もあるわけです。
ややこしいのは彩度と明度の違いにあるでしょう。実は色の表現とはあいまいなものなのです。だからこそ、彩度と明度の違いを理解することが、イメージを伝えるために必要になります。
色見本で比べてみると、この違いはもっとはっきりするでしょう。こっちのが鮮やか、こっちのほうは暗いといった違いがわかるからです。同じ色でも違いが出てきますので、わずかな表現の誤差も、彩度と明度によって表現すると伝わりやすくなりますよ。
外壁塗装の色見本の注意点
外壁塗装には色見本が大切ですが、そのまま見るのではなく、注意点を理解して判断しなければいけません。いろいろな要素も絡むなかで、色見本を正確に使うために必要なことをまとめてみました。
大きさ
面積効果の影響からも、大事なことは塗られた面積の大きさということがわかりましたよね。大きくなれば明るくなり、小さくなれば暗く見えます。色見本の大きさによって影響を受けるため、理解しておかなければいけません。できるだけ大きなものを用意できればいいですが、限界もあります。実際に外壁塗装する大きさにはできないのですから、カラーシミュレーションとの併用がカギになります。
環境から受ける影響
色の三属性にも影響されますが、周囲の明るさは大事な要素です。部屋のなかで色見本を見るのと、屋外で見るのでは全然違うと思いませんか?ライトアップされたところなら、薄く明るく見えるはずです。暗い部屋のなかなら色も暗く、黒に近いと感じるでしょう。
見る環境で色の感じ方は必ず変わります。外壁塗装は屋外なのですから、晴れた明るい日に外で色見本を見るというのも大事なポイントです。
環境から受ける影響はとても大きいことから、見る場所を変えて比較することは覚えておきましょう。
周囲の明るさ
周囲の明るさとは、色を塗った場所の周りの明るさのことです。たとえば、周りが白のところに黒を配置します。明るく見えて少しグレーっぽく感じますよね。逆にすると白は暗くなりグレーに感じます。
外壁塗装ではツートンカラーなどが該当します。塗られた色の面積の比率などによって感じ方が変わります。屋根の色や玄関、サッシが差し色になって影響を与えることもあります。これが周囲の明るさの影響です。 カラーシミュレーションを使えばわかりやすいですが、実際に色見本同士を並べてみるといった方法も有効です。
どちらにしても面積の比率や見る位置でも変化が生まれるため、いろいろな手法で試す必要があるでしょう。
色見本と番号
色見本には番号が振られています。メーカーであれば商品に対応した番号かもしれません。日本塗料工業会の場合、決められた日塗工番号となります。なんだろうと思うかもしれませんが、これがとても大切です。実際に番号を伝えるだけで色がわかるので、共通の情報として利用できるのです。
日本工業規格(JIS)やカラーユニバースデザイン機構、日本塗床工業協会、国土交通省の景観に配慮した防護柵色で定められた色といったところまで通用します。驚くほど範囲が広いですよね。
色番号にはいろいろな理論が入っていますが、外壁塗装で色見本を見る場合、基本的なものだけで十分です。Nのあとに数字がかかれていますが、1に近づくと黒くなります。逆に9.5までいくと白になると覚えておきましょう。
有彩色の場合には数字で、アルファベットが色相です。次の数字が明度で「/」以降の数字が彩度になります。これだけで色の違いがわかるのです。つまり、色の三属性を理解できると、色見本の微妙な違い、自分の思っている色との誤差も簡単にわかります。
色見本を役立てられる場面
色見本を役立てられる場面はいろいろとあります。
まず自分のイメージを明確なものにしたいとき、色見本は大事な役割を果たすでしょう。言葉で表現していても、共通のイメージにはなりにくいからです。正確な形にするためには、色見本はとても大切な存在になります。
色見本を使って比較することもできます。現在の外壁塗装の色と比較すれば、どのような違いがあるかを試せるからです。屋根との比較、ツートンカラーの効果を感じる手段にもなります。
最初にイメージをつかむ手段としては、色見本はとても大切です。ですが、最終的な仕上がりを目指す場合には、現実的なイメージに繋がりにくいことを覚えておいてください。面積効果をはじめさまざまな影響を受けるからです。
色選びと人に与える影響
色見本は、色の影響や本当に外壁塗装に使うべきかを判断することもできます。色には複数の効果があり、感じ方にも違いを与えます。こんな感じの色が欲しいと思ったとき、色が与える影響を理解することが大切です。外壁塗装のイメージとして自分が思い描くものと繋がるか、大事な判断材料となるからです。
心理的影響
まず大事なことが心理的影響です。色によって元気になるとか、心が沈むとか表現しているケースがありますよね。この効果が外壁塗装にもあらわれる可能性を考えなければいけません。
心理的影響は暗記や認識力を高めるといったことです。覚えやすいといったことは心理的影響によるものといえます。外壁塗装でいえば、「あそこに白い家があるでしょ?」といわれるのは、心理的に覚えやすいことが影響しているのです。好みも心理的影響で、この色は好きじゃやないといったことにあらわれてきます。
生理的影響
生理的影響とは、交感神経や副交感神経に影響を与えると考えればいいでしょう。青はリラックスしやすいといったのも生理的影響です。
外壁塗装でいえば、白の外壁は清楚に見えますよね。純白という言葉があるように清廉なイメージも浮かびます。住んでいる人もそうではないかと思うのは、家のデザインだけではないのです。
外壁塗装の生理的影響は、自分達よりも外部の人たちに対する形であらわれてくるといえるでしょう。周辺の人との調和など、住んでいくために非常に大事な要素です。
感情的影響
感情的な部分も色の大きな影響です。落ち着くような色というのは、感情に働きかけている部分です。オレンジだとなんだか明るくなるということもあるでしょう。外壁塗装に白や茶を選ぶのも、落ち着きやすくなるからです。
文化的影響
非常に重要な影響ですが、文化に対する影響もあります。
日本人が茶の外壁塗装に落ち着きや安定感をもちますが、国によっては違うのです。例えば黄色は、日本人は明るいと感じるでしょう。ところが、キリスト教圏になると裏切りなど不誠実を表す色になる可能性があります。もちろん、現在はそこまで厳格にもたないこともありますが、文化による影響はとても大きなものです。
周辺の外壁塗装に合わせたほうがいいというのも、実はこうした文化的影響が出てきます。閑静な住宅地のなかに、真っ赤な外壁塗装があるとどうでしょうか。閑静なイメージに合わない、おかしいと思うのは、文化的な部分の影響も強く出てくるからです。
まとめ
外壁塗装にとって、色見本は大事なものです。だからこそ、どのように活用するかを考えなければいけません。
そして、外壁塗装はさまざまなところに影響を与えます。生活環境にも大事な要素となるため、色見本だけでなく、カラーシミュレーションも活用して検討を重ねていくことが大切です。
シンニッケンでは、精度の高いカラーシミュレーションがあります。シンニッケンのカラーシミュレーションを利用して、色見本と併せながらぴったりの外壁塗装色を見つけてみてはいかがでしょうか。